がん治療と向き合うあなたのためのアピアランスケア:脱毛・肌・爪の悩みから心のケアまで、専門家のアドバイスとQ&Aで解説
がん治療は、心身ともにさまざまな変化をもたらします。その中でも、髪が抜けたり、肌の色つやが変わったり、爪がもろくなったりといった外見(アピアランス)の変化は、多くの方が直面する大きな悩みのひとつです。ときに、こうした外見の変化は、気持ちが落ち込んだり、人と会うのが億劫になったりするなど、精神的な負担につながることも少なくありません。
近年、このようながん治療に伴う外見の変化に対するケアとして、「アピアランスケア」の重要性が広く認識されるようになってきました。アピアランスケアは、単におしゃれをすることや見た目を整えることだけを目的とするものではありません。治療中であってもQOL(Quality of Life:生活の質)を維持し、その人らしい生活を送ることを支えるための大切なケアなのです。
この記事では、がん治療を始める方や治療中の方、そしてそのご家族が、アピアランスケアについて正しい知識を持ち、具体的な悩みにどのように対処していけばよいのか、そして心のケアや利用できるサポート体制にはどのようなものがあるのかを、網羅的に解説します。専門家のアドバイスや、よくある質問にお答えするQ&Aも交えながら、皆さんが少しでも前向きな気持ちで治療に取り組めるよう、その一助となることを目指しています。
第1章:アピアランスケアの基本:なぜ大切?何ができる?
がん治療と向き合う中で、「アピアランスケア」という言葉を耳にする機会が増えたかもしれません。この章では、アピアランスケアの基本的な考え方や、なぜそれが大切なのか、そして具体的にどのようなことができるのかについて解説します。
アピアランスケアとは?~治療中の「自分らしさ」を支えるケア~
アピアランスケアの定義と目的(QOL向上、心理的サポート)
アピアランスケアとは、がんそのものや、手術、抗がん剤治療、放射線治療などの治療に伴って生じる外見の変化(脱毛、皮膚の変化、爪の変化、手術痕など)に対して、医学的・整容的・心理社会的な支援を用いて、患者さんの苦痛を軽減するケアのことです。外見を補うための具体的な方法を提供するだけでなく、それによって患者さんが精神的な安定を取り戻し、治療中も自分らしさを失わずに過ごせるようにサポートすることを目的としています。結果として、患者さんのQOL(生活の質)の維持・向上に繋がり、より前向きに治療に取り組む意欲を引き出すことも期待されています。
アピアランスケアの重要性:なぜ今注目されているのか
かつては、がん治療において外見の変化は「仕方がないこと」として捉えられがちでした。しかし、治療技術の進歩により、がんと共に生きる期間が長くなる中で、患者さんが治療中も社会とのつながりを持ち、自分らしく生活できることの重要性が再認識されるようになりました。外見の変化は、自己認識や他者とのコミュニケーションにも影響を与えるため、アピアランスケアを通じてその苦痛を和らげることは、患者さんの社会参加を促し、精神的な孤立を防ぐ上でも非常に大切です。医療者だけでなく、美容の専門家や心理士など、多職種が連携してサポートする体制も整いつつあります。
アピアランスケアでできることの概観(脱毛、皮膚、爪、メンタルなど)
アピアランスケアで対応できる範囲は多岐にわたります。主なものとしては、以下のようなケアが挙げられます。
- 脱毛ケア:医療用ウィッグの選定・調整、帽子やバンダナの活用法、頭皮ケアの方法など。
- 皮膚(肌)ケア:乾燥、色素沈着、かゆみ、発疹などに対するスキンケア方法、低刺激性の化粧品選び、メイクの工夫など。
- 爪のケア:変色、脆弱化、割れ、凹凸などに対する保湿や保護、爪に優しいネイルケアの方法など。
- 手術痕のケア:傷跡の保護、カバーメイクの方法など。
- その他:眉毛やまつ毛の脱毛への対応、むくみに対するケア、リンパ浮腫のケア、人工乳房や下着の選択など。
- 心理的サポート:外見の変化に伴う不安やストレスに対するカウンセリング、情報提供、患者さん同士の交流の場の提供など。
いつから始める?誰に相談できる?
アピアランスケアを考え始めるタイミング
アピアランスケアを考え始めるのに「早すぎる」ということはありません。がんの診断を受けたとき、治療方針が決まったときなど、できるだけ早い段階から情報収集を始めることをお勧めします。特に、抗がん剤治療などで脱毛が予測される場合は、脱毛が始まる前に医療用ウィッグの準備を始める方が多いです。事前に情報を得ておくことで、いざという時に慌てず、安心して対処できます。
主な相談先(医師、看護師、がん相談支援センター、専門サロンなど)
アピアランスケアについて相談できる場所はいくつかあります。
- 担当医や看護師:まずは、ご自身の治療内容や副作用について最もよく知る担当医や看護師に相談してみましょう。治療による外見変化の可能性や、院内で受けられるサポートについて情報を提供してくれます。
- がん相談支援センター:全国のがん診療連携拠点病院などに設置されており、がんに関する様々な相談に対応しています。アピアランスケアに関する情報提供や、地域の専門機関の紹介なども行っています。無料で利用でき、患者さん本人だけでなくご家族も相談可能です。
- アピアランスケア専門のサロンや相談室:医療用ウィッグの専門サロンや、病院内に併設されたアピアランスケア相談室などでは、より専門的なアドバイスやケアを受けることができます。美容師や専門の相談員が対応してくれることが多いです。
- 患者会やNPO法人:同じような経験を持つ患者さん同士で情報交換をしたり、悩みを共有したりできる場です。アピアランスケアに関する具体的な工夫や体験談を聞くこともできます。
これらの相談先を上手に活用し、一人で悩まずに専門家や経験者のサポートを得ることが大切です。
第2章:【部位別】がん治療による外見変化と具体的なケア方法
がん治療は、体のさまざまな部分に影響を与え、外見の変化を引き起こすことがあります。この章では、特に多くの方が悩まれる「脱毛」「皮膚(肌)の変化」「爪の変化」に焦点を当て、それぞれの原因や具体的なケア方法について詳しく解説します。
脱毛へのケアと医療用ウィッグの活用
抗がん剤治療などの副作用として、脱毛は多くの方が経験する外見変化の一つです。髪は人の印象を大きく左右するため、脱毛に対する不安は大きいかもしれません。しかし、適切なケアと準備を行うことで、その負担を軽減することができます。
なぜ髪が抜けるの?脱毛のメカニズムと時期(治療法による違い)
抗がん剤は、活発に分裂・増殖する細胞に作用することでがん細胞を攻撃しますが、同時に正常な細胞の中でも分裂が活発な毛母細胞(髪の毛を作り出す細胞)にも影響を与えてしまいます。これにより、髪の毛が十分に成長できなくなったり、抜けやすくなったりするのが脱毛の主なメカニズムです。
脱毛が始まる時期や程度は、使用する抗がん剤の種類や量、投与方法、また個人の体質によって異なります。一般的には、治療開始後2~3週間頃から脱毛を自覚し始める方が多いと言われています。全ての抗がん剤で必ず脱毛が起こるわけではなく、最近では脱毛の副作用が少ない薬剤も増えています。また、放射線治療の場合は、照射された部位の毛が抜けることがあります。ご自身の治療で脱毛が起こりうるのか、いつ頃から起こりそうかについては、事前に担当医や看護師に確認しておきましょう。
脱毛が始まる前の準備と心構え
脱毛が予測される場合、事前に準備をしておくことで、精神的なショックを和らげ、スムーズに対応することができます。
- ヘアカット:髪が長い方は、事前に短くカットしておくと、脱毛時の抜け毛の処理が楽になったり、ウィッグを着用しやすくなったりする場合があります。また、脱毛による見た目の変化のショックを和らげる効果も期待できます。
- 医療用ウィッグや帽子の検討:脱毛が始まる前に、医療用ウィッグや帽子、バンダナなどを準備しておくと安心です。特にウィッグは、試着して自分に合うものを選ぶのに時間がかかることもあるため、早めに情報収集を始めましょう。(詳しくは後述)
- 心の準備:脱毛は一時的なものであることが多いと理解し、治療の一環として受け止める心構えも大切です。不安な気持ちは医療者や家族、経験者などに話してみましょう。
脱毛中の頭皮ケア:優しく、清潔に
脱毛中や脱毛後の頭皮は非常にデリケートになっています。以下の点に注意して、優しくケアしましょう。
- シャンプーの選び方:刺激の少ない、アミノ酸系などの低刺激性シャンプーを選びましょう。無香料・無着色のものがおすすめです。石鹸成分が強いものや、洗浄力の強すぎるものは避けた方が良いでしょう。
- 洗い方のコツ:
- 洗髪前に軽くブラッシングして、抜けかかっている髪を取り除いておくと、洗髪中の絡まりを防げます。
- シャンプーは直接頭皮につけず、手でよく泡立ててから、指の腹で優しくマッサージするように洗います。爪を立ててゴシゴシこするのは禁物です。
- すすぎは、シャンプー成分が残らないように、ぬるま湯で時間をかけて丁寧に行いましょう。
- リンスやコンディショナーは、頭皮に直接つかないように毛先中心に使用します。
- 乾燥と保護:洗髪後は、タオルで優しく押さえるように水分を拭き取ります。ドライヤーは低温で、頭皮から離して短時間で使用するか、自然乾燥が良いでしょう。
- 頭皮の保湿と保護:頭皮も乾燥しやすいため、低刺激性のローションやオイルで保湿を心がけましょう。外出時はもちろん、室内でも帽子やバンダナ、シルクなどの柔らかい素材のナイトキャップを着用し、頭皮を紫外線や摩擦、冷えから保護することが大切です。
医療用ウィッグの選び方完全ガイド
医療用ウィッグは、脱毛中のQOLを支える重要なアイテムです。自分に合ったウィッグを選ぶためのポイントをご紹介します。
- 種類と特徴:
- 毛材:人毛、人工毛(化学繊維)、ミックス毛(人毛と人工毛の混合)があります。人毛は自然な質感でアレンジしやすいですが、手入れに手間がかかり、価格も高めです。人工毛はスタイルが崩れにくく手入れが簡単で、比較的安価ですが、熱に弱いものや不自然な光沢があるものもあります。ミックス毛は両者のメリットを併せ持ちますが、価格は中間程度です。
【専門用語解説】医療用ウィッグとは?
医療用ウィッグとは、主にがん治療や脱毛症などで髪を失った方が使用するために作られたウィッグのことです。JIS規格(S9623)では、肌に優しい素材の使用、通気性、軽量性、自然な外観などが考慮されているものが「医療用ウィッグ」として定義されています。おしゃれ用のウィッグと比べて、デリケートな頭皮への配慮や長時間の着用に適した工夫がされています。
- 製法:既製品、セミオーダー(既製品を元に調整)、フルオーダー(頭の型を取って一から作製)があります。既製品はすぐに手に入り安価ですが、フィット感に限界があることも。フルオーダーは最も自然でフィットしますが、高価で時間もかかります。セミオーダーはその中間です。
- 毛材:人毛、人工毛(化学繊維)、ミックス毛(人毛と人工毛の混合)があります。人毛は自然な質感でアレンジしやすいですが、手入れに手間がかかり、価格も高めです。人工毛はスタイルが崩れにくく手入れが簡単で、比較的安価ですが、熱に弱いものや不自然な光沢があるものもあります。ミックス毛は両者のメリットを併せ持ちますが、価格は中間程度です。
- 自然に見せるためのチェックポイント:
- 髪質・色:元の自分の髪質や色に近いものを選ぶと、より自然に見えます。ただし、少し明るめの色を選ぶと顔色がよく見えることもあります。
- つむじ・分け目:人工皮膚がついているものは、つむじや分け目が自然に見えやすいです。
- サイズ・フィット感:きつすぎると頭痛の原因になり、緩すぎるとズレやすいです。アジャスターで調整できるものがほとんどですが、試着してしっかり確認しましょう。
- スタイル:元の髪型に近いものや、試してみたい髪型を選べます。美容師が在籍するサロンでは、似合うようにカット調整してくれるところもあります。
- 試着の重要性と相談できる場所:
- ウィッグは必ず試着して選びましょう。実際に着けてみることで、見た目だけでなく、着け心地や重さも確認できます。
- 相談場所としては、医療用ウィッグ専門のサロン、百貨店のウィッグ売り場、病院内の相談室や売店などがあります。美容師や専門アドバイザーに相談しながら選ぶのがおすすめです。個室で相談できるところも多いので、プライバシーも安心です。
- 費用相場と助成金・補助金制度の活用:
- 医療用ウィッグの価格は、数万円から数十万円と幅広いです。毛材や製法によって大きく異なります。
- 自治体によっては、医療用ウィッグの購入費用の一部を助成する制度があります。助成額や条件は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の役所やがん相談支援センターに問い合わせてみましょう。(詳しくは第4章で解説)
ウィッグの日常的なお手入れと保管方法
ウィッグを長持ちさせ、快適に使用するためには、適切なお手入れが欠かせません。人毛、人工毛、ミックス毛など毛材によってお手入れ方法が異なるため、購入時に必ず確認しましょう。
- ブラッシング:着用後は専用のブラシで優しくブラッシングし、ホコリや絡まりを取ります。
- シャンプー:定期的に専用のシャンプーとコンディショナーで洗浄します。人工毛は熱に弱いものが多いため、お湯の温度に注意が必要です。
- 乾燥:タオルで優しく水分を拭き取り、ウィッグスタンドなどに乗せて自然乾燥させるのが基本です。ドライヤーの使用可否は毛材によります。
- 保管:型崩れを防ぐため、ウィッグスタンドに置いて保管します。直射日光や高温多湿を避けましょう。
詳しいお手入れ方法は、購入したウィッグの説明書を確認するか、購入店に尋ねましょう。
脱毛期から発毛期への移行ケア(地毛との馴染ませ方、ヘアスタイルの工夫)
治療が終了し、髪が生え始めると、ウィッグをいつ外すか、どのように地毛に移行するかが気になります。地毛がある程度生えそろうまでは、数ヶ月から1年程度かかることもあります。
- 焦らずゆっくりと:発毛のスピードには個人差があります。焦らず、ご自身のペースで移行しましょう。
- 地毛とウィッグの併用:生え始めの短い髪とウィッグを組み合わせることも可能です。例えば、前髪やもみあげだけ地毛を出し、トップは部分ウィッグでカバーするなどの方法があります。
- ヘアスタイルの工夫:ベリーショートやショートヘアなど、短い髪でもおしゃれに見えるヘアスタイルに挑戦するのも良いでしょう。美容師に相談し、地毛の状態に合わせたカットやスタイリングを提案してもらいましょう。
- 髪や頭皮に優しいケアを継続:生えてきた髪もデリケートなので、引き続き低刺激性のシャンプーを使用し、優しくケアすることが大切です。パーマやカラーリングは、髪と頭皮の状態が十分に回復してから、医師や美容師に相談の上で行いましょう。一般的には治療終了後半年~1年程度が目安と言われますが、個人差が大きいです。
皮膚(肌)の変化とスキンケア
がん治療中には、皮膚が乾燥したり、色素沈着が起きたり、かゆみや発疹が出たりと、さまざまな肌トラブルが現れることがあります。これらは治療薬の影響や、体の抵抗力が低下することなどが原因で起こります。
なぜ肌トラブルが起きるの?(乾燥、色素沈着、発疹、かゆみなど)
抗がん剤や分子標的薬、放射線治療などは、皮膚の細胞にも影響を与えます。これにより、皮膚のバリア機能(外部の刺激から肌を守り、内部の水分蒸発を防ぐ機能)が低下し、乾燥しやすくなります。乾燥はかゆみを引き起こし、掻いてしまうことでさらにバリア機能が悪化するという悪循環に陥ることもあります。
また、薬の影響でメラニン色素が過剰に作られたり、排出が滞ったりすることで、シミやくすみ、全体的な色素沈着が起こることがあります。特定の薬剤では、ニキビのような発疹(ざ瘡様皮疹)や手足症候群(手足のしびれ、赤み、腫れ、痛みなど)といった副作用が見られることもあります。
治療中の基本スキンケア:保湿・保護・紫外線対策
治療中のデリケートな肌を守るためには、以下の3つの基本ケアが非常に重要です。
- 保湿:肌のバリア機能を高め、乾燥やかゆみを防ぐために、こまめな保湿が最も大切です。
- 洗顔料・保湿剤の選び方:低刺激性、無香料、無着色、アルコールフリーなど、肌に優しい処方のものを選びましょう。セラミドやヒアルロン酸、ワセリンなどが配合された保湿力の高いものがおすすめです。普段使っているものでも、刺激を感じなければ継続して使用できますが、敏感になっている場合はサンプルなどで試してからが良いでしょう。
【専門用語解説】低刺激性(化粧品など)とは?
化粧品などにおける「低刺激性」とは、アレルギーテストやパッチテスト、スティンギングテスト(ピリピリ、チクチクといった刺激感の有無を確認するテスト)などを実施し、皮膚に対する刺激が少ないことを確認している製品を指すことが多いです。ただし、全ての人に刺激が起きないというわけではありません。敏感肌向け、アレルギーテスト済み、などの表示も参考にしましょう。
- 正しい洗顔方法と保湿のタイミング:洗顔時は、洗顔料をよく泡立て、肌をこすらず泡で優しく包み込むように洗います。熱いお湯は皮脂を取りすぎて乾燥を助長するため、ぬるま湯で洗い流しましょう。洗顔後や入浴後は、肌が乾燥する前に、すぐに化粧水や乳液、クリームなどで十分に保湿します。特に乾燥が気になる部分には重ね付けをしましょう。
- 洗顔料・保湿剤の選び方:低刺激性、無香料、無着色、アルコールフリーなど、肌に優しい処方のものを選びましょう。セラミドやヒアルロン酸、ワセリンなどが配合された保湿力の高いものがおすすめです。普段使っているものでも、刺激を感じなければ継続して使用できますが、敏感になっている場合はサンプルなどで試してからが良いでしょう。
- 保護:外部からの刺激を避け、肌を守ることも大切です。衣類は、肌触りの良い綿などの天然素材を選び、締め付けの少ないゆったりとしたデザインのものがおすすめです。タグや縫い目が肌に当たらないように工夫しましょう。
- 紫外線対策:治療中の肌は紫外線に対しても敏感になっています。紫外線はシミやそばかすの原因になるだけでなく、乾燥や炎症を悪化させることもあります。外出時はもちろん、室内でも窓からの紫外線を意識し、季節を問わず紫外線対策を行いましょう。
- 日焼け止めの選び方・使い方:SPF値は日常生活なら15~30程度、PA値はPA+~PA++程度を目安に、肌に優しいノンケミカル処方(紫外線吸収剤不使用)のものを選ぶと良いでしょう。汗をかいたり、タオルで拭いたりした後はこまめに塗り直すことが大切です。帽子、日傘、サングラス、長袖の衣類なども活用しましょう。
部位別の肌トラブル対策(顔、手足など)
顔や手足など、特にトラブルが出やすい部位は、より丁寧なケアが必要です。
- 顔:乾燥しやすい頬や口周りは特に念入りに保湿しましょう。目元や口元など皮膚の薄い部分は、専用のアイクリームやリップクリームを使用するのも効果的です。
- 手足:手足症候群の症状(赤み、腫れ、痛み、ひび割れなど)が出やすい場合は、保湿クリームをこまめに塗り、摩擦や圧迫を避けるようにしましょう。水仕事の際はゴム手袋を着用し、その下に綿の手袋をすると刺激が和らぎます。靴下も柔らかい素材のものを選びましょう。症状が辛い場合は、我慢せずに医師や看護師に相談してください。
治療中でも安心なメイクのコツ
治療中でも、メイクをすることで気分が明るくなったり、自信が持てたりすることがあります。肌に負担をかけないメイクのポイントをご紹介します。
- 化粧下地、ファンデーションの選び方と使い方:保湿力があり、紫外線カット効果もある低刺激性の化粧下地を選びましょう。ファンデーションは、肌への負担が少ないパウダータイプやミネラルファンデーションなどがおすすめです。厚塗りを避け、気になる部分はコンシーラーでカバーするなど、薄付きを心がけましょう。
- 眉毛・まつ毛の脱毛への対処法:
- 眉毛:脱毛した場合、アイブロウペンシルやパウダーで自然に描き足します。眉用のテンプレートを使うと左右対称に描きやすいです。髪色に合わせた色を選ぶと自然です。事前に自分の眉の形を写真に撮っておくと参考になります。
- まつ毛:まつ毛が抜けると目元が寂しい印象になりがちです。アイラインを細く引いたり、低刺激性のつけまつ毛を使用したりするのも良いでしょう。ただし、接着剤でかぶれないか事前にパッチテストをすると安心です。
- アートメイク(医療メイク)を検討する場合は、治療開始前に医師とよく相談し、衛生管理のしっかりした医療機関で行うようにしましょう。
- メイク製品の選び方:低刺激性で、香料やアルコール、パラベンなどが無添加のものを選ぶと良いでしょう。石鹸やお湯で簡単に落とせるタイプの製品は、クレンジング時の肌負担を軽減できます。使用前にはパッチテストを行うとより安心です。
FOR ACのような専門サロンでは、治療中の肌状態に合わせたメイクのアドバイスや、医療用ウィッグに合わせた眉の描き方などのレッスンを行っている場合もあります。
爪の変化とネイルケア
抗がん剤治療などにより、爪にもさまざまな変化が現れることがあります。爪は小さいパーツですが、変色したりもろくなったりすると、日常生活で不便を感じたり、見た目が気になったりすることがあります。
なぜ爪に変化が起きるの?(変色、脆弱化、割れ、凹凸など)
皮膚と同様に、爪も活発に細胞分裂を繰り返して成長しています。そのため、抗がん剤の影響を受けやすく、爪を作る爪母細胞の働きが障害されることで、さまざまな変化が起こります。
主な変化としては、以下のようなものがあります。
- 色の変化:黒ずむ(色素沈着)、白く濁る、黄色っぽくなる、筋が入るなど。
- 形の変化:爪が薄くなる、もろくなる、割れやすくなる、欠けやすくなる、表面に凹凸ができる、二枚爪になる、巻き爪になるなど。
- 爪周囲の炎症:爪の周りの皮膚が赤く腫れたり、痛みが出たりする「爪囲炎(そういえん)」を起こすこともあります。
これらの変化は、使用する薬剤の種類や期間、個人差によって現れ方が異なります。
爪の基本的なケア:保湿・保護・清潔
デリケートになっている爪と爪周りの皮膚を健やかに保つためには、以下のケアが基本です。
- 保湿:爪も皮膚と同様に乾燥しやすいため、ネイルオイルやハンドクリームで爪の生え際(甘皮部分)や爪全体、指先までこまめに保湿しましょう。特に水仕事の後や就寝前は念入りに。
- 保護:
- 爪がもろくなっている場合は、外部からの衝撃で割れたり欠けたりしやすいため、日常生活での保護が重要です。水仕事や掃除の際にはゴム手袋を着用し、その下に綿の手袋をすると、刺激や乾燥から守ることができます。
- 爪切りは、爪への負担が少ないガラス製や目の細かい爪やすりを使用し、少しずつ削って長さを整えるのがおすすめです。爪切りを使う場合は、一度に深く切らず、端から少しずつ切り、角を丸く整えると割れにくくなります。入浴後など爪が柔らかくなっている時に行うと良いでしょう。
- 甘皮は爪を保護する役割があるので、無理に押し上げたり切ったりするのは避けましょう。
- 清潔:爪の間や爪周りを清潔に保つことも大切です。ただし、ゴシゴシ洗いすぎると刺激になるので、優しく洗いましょう。
治療中でも楽しめるネイルケア
爪の変色や凹凸が気になる場合、ネイルカラーでおしゃれを楽しむことも、気分転換やカバーにつながります。ただし、製品選びや方法には注意が必要です。
- 爪に優しいネイルカラーや補強コートの選び方:
- 有機溶剤(トルエン、ホルムアルデヒドなど)を含まない、または配合量の少ない、爪への負担が少ない製品を選びましょう。「5フリー」「7フリー」などと表示されているものも参考になります。
- 水溶性ネイルや、お湯でオフできるタイプのネイルも、除光液による刺激を避けられるためおすすめです。
- 爪が薄くなったり割れやすくなったりしている場合は、ベースコートや爪補強コートで保護するのも効果的です。マットタイプのものを選べば、男性でも目立たずに使用できます。
- マニキュアを塗る際の注意点、オフの方法:
- 塗る前には、爪の油分をしっかり拭き取っておくと持ちが良くなります。
- ベースコートを塗ってからカラーを塗ると、色素沈着を防ぎ、爪への負担を軽減できます。
- オフする際は、アセトンフリーの除光液(リムーバー)を選び、コットンに含ませて爪の上にしばらく置き、優しく拭き取るようにしましょう。ゴシゴシこすらないように注意してください。
- 専門家によるケア:アピアランスケアに理解のあるネイルサロンや、医療機関に併設されたサロンでは、爪の状態に合わせた専門的なケアやアドバイスを受けることができます。FOR ACのようなサロンでも、爪に優しい製品を使用したネイルケアを提供しています。
爪のトラブルがひどい場合や、痛み、化膿などがある場合は、自己判断せずに必ず医師や看護師に相談してください。
第3章:男性のためのアピアランスケア
アピアランスケアは女性だけのものではありません。男性もがん治療によって外見の変化に直面し、悩みを抱えることがあります。この章では、男性特有の悩みやケアのポイントについて解説します。
男性特有の悩みと向き合う
男性のがん患者さんが抱える外見上の悩みは、女性と共通する部分もあれば、男性ならではのものもあります。
頭髪以外の脱毛(ひげ、眉毛、体毛)への対応
抗がん剤治療では、頭髪だけでなく、ひげ、眉毛、まつ毛、腕や脚の毛など、全身の毛が抜けることがあります。
- ひげの脱毛:毎日剃っていたひげがなくなると、顔の印象が変わって戸惑う方もいます。また、治療の影響で肌が敏感になっているため、ひげ剃り時にカミソリ負けをしやすくなることも。電気シェーバーを使用し、シェービング剤やアフターシェーブローションも低刺激性のものを選ぶと良いでしょう。ひげがまばらに生えてくる時期は、無理に剃らずに自然に任せるか、気になる部分だけを整える程度にするのがおすすめです。
- 眉毛の脱毛:眉毛が薄くなったり抜けたりすると、顔の印象がぼやけたり、表情が乏しく見えたりすることがあります。自然な色のアイブロウペンシルで描き足したり、眉用のテンプレートを使ったりするのも一つの方法です。男性向けの眉メイクレッスンを行っているサロンもあります。
- 体毛の脱毛:腕や脚、胸などの体毛が抜けることもあります。これらは衣服で隠れる部分ではありますが、温泉などで気になる方もいるかもしれません。脱毛は一時的なことが多いので、焦らずに回復を待ちましょう。
肌質の違いを考慮したスキンケアのポイント
一般的に男性の肌は女性に比べて皮脂分泌が多く、水分量が少ない傾向があると言われています。しかし、がん治療中は皮脂バランスが崩れ、乾燥しやすくなることがあります。
- 洗顔:刺激の少ない洗顔料をよく泡立てて、優しく洗いましょう。ゴシゴシこすらず、Tゾーンなど皮脂の多い部分を中心に丁寧に。
- 保湿:化粧水で水分を補給した後、乳液やクリームで油分を補い、水分の蒸発を防ぎましょう。ベタつきが気になる場合は、さっぱりとした使用感のジェルタイプの保湿剤などがおすすめです。オールインワンタイプの製品も手軽で便利です。
- 紫外線対策:男性も紫外線対策は必須です。日焼け止めを塗る習慣がない方も、治療中は特に意識して使用しましょう。帽子やサングラスも活用してください。
爪のケア:ビジネスシーンでも目立たない工夫
爪の変色や凹凸は、名刺交換の際など、手元が目につきやすいビジネスシーンで気になるかもしれません。
- 保湿と保護:基本的なケアは女性と同様に、ハンドクリームやネイルオイルでの保湿、爪やすりでの長さ調整が大切です。
- 目立たないカバー:爪の色素沈着や凹凸が気になる場合は、無色透明やマットな質感の爪補強コートやベースコートを塗ることで、爪を保護しつつ自然にカバーできます。光沢のないタイプなら、男性でも抵抗なく使いやすいでしょう。
男性向けアピアランスケア製品や情報収集のコツ
最近では、男性向けのスキンケア製品やウィッグも増えてきています。
男性用ウィッグやケア用品
- 男性用ウィッグ:ビジネスシーンでも使いやすい自然なスタイルのものや、部分的にカバーできるものなど、種類も豊富になっています。専門サロンで相談し、試着して選ぶのがおすすめです。
- スキンケア製品:男性向けの低刺激性スキンケアラインも充実しています。ドラッグストアや百貨店、オンラインショップなどで探してみましょう。
相談しにくい男性が情報を得るには(ガイドブック、オンラインコミュニティなど)
「外見の悩みを人に相談するのは抵抗がある」と感じる男性は少なくないかもしれません。しかし、一人で抱え込まずに情報を得ることが大切です。
- ガイドブックやウェブサイト:国立がん研究センターが発行している男性向けのアピアランスケアガイドブック『NO HOW TO(ノーハウツー)』など、信頼できる情報源があります。がん情報サービスのウェブサイトなどでも情報提供されています。
- オンラインコミュニティ:同じ病気や治療を経験している男性患者さんのブログやSNS、オンラインの患者会などでは、匿名で情報交換をしたり、悩みを相談したりできる場合があります。
- パートナーや家族のサポート:信頼できるパートナーや家族に悩みを打ち明け、情報収集を手伝ってもらうのも良いでしょう。
大切なのは、自分だけで解決しようとせず、様々なリソースを活用することです。
第4章:アピアランスケアを支える制度と心のケア
アピアランスケアは、単に外見を整える技術だけでなく、それを支える社会的な制度や、心のケアも非常に重要です。この章では、利用できる公的な支援制度や相談窓口、そして外見の変化が心に与える影響と、その対処法について解説します。
知っておきたい公的支援と相談窓口
アピアランスケアには費用がかかることもあります。経済的な負担を少しでも軽減し、安心してケアに取り組むために、利用できる制度や相談窓口を知っておきましょう。
医療用ウィッグ等の購入費助成制度(自治体ごとの確認方法)
がん治療に伴う脱毛に対応するための医療用ウィッグや、乳房切除後のための胸部補整具(人工乳房や補整下着など)の購入費用の一部を助成する制度を設けている自治体(都道府県や市区町村)が増えています。
- 助成内容:助成額の上限(例:数万円程度)や対象品目、所得制限の有無などは、自治体によって大きく異なります。
- 申請方法:一般的には、申請書に加えて、医師の診断書(がん治療を受けていること、ウィッグ等が必要であることの証明)、購入した際の領収書などが必要となります。
- 確認方法:ご自身がお住まいの市区町村の役所の担当窓口(福祉課、健康増進課など)や、公式ウェブサイトで確認できます。「〇〇市 医療用ウィッグ 助成金」のように検索してみるのも良いでしょう。また、がん相談支援センターでも情報提供を受けられる場合があります。
これらの制度は、申請期限が設けられている場合もあるため、早めに情報を確認し、必要な手続きを行いましょう。
【専門用語解説】自治体助成金とは?
地方自治体(都道府県や市区町村)が、特定の目的のために住民や事業者に対して支給するお金のことです。がん患者さんのアピアランスケア支援としては、医療用ウィッグや乳房補整具の購入費用の一部を助成する制度が多くの自治体で実施されています。内容は自治体ごとに異なるため、確認が必要です。
がん相談支援センターの役割と活用法
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている無料の相談窓口です。患者さんやご家族、地域の方々など、どなたでも利用できます。
- 相談できること:がんに関する治療や療養生活全般についての相談が可能です。アピアランスケアについても、情報提供、アドバイス、地域の専門機関の紹介などを行っています。例えば、「医療用ウィッグの助成金について知りたい」「副作用の肌荒れに困っているが、どこに相談すればいいか」といった具体的な相談にも対応してくれます。
- 利用方法:多くは電話相談や面談(予約制の場合あり)に対応しています。病院のウェブサイトなどで連絡先や受付時間を確認しましょう。
【専門用語解説】がん相談支援センターとは?
全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する相談窓口です。患者さんやご家族などが、無料でがんに関するさまざまな情報やアドバイスを受けることができます。療養上の悩みや不安、アピアランスケア、医療費、社会資源の活用など、幅広い相談に対応しています。
患者会やNPO法人などのサポート団体
同じ病気や治療を経験した仲間と出会える患者会や、がん患者さんを支援するNPO法人なども、アピアランスケアに関する情報交換や精神的な支えを得られる貴重な場です。
- 情報交換:実際にアピアランスケアに取り組んだ経験者の体験談や、具体的な工夫、おすすめの製品情報などを共有できます。
- 精神的サポート:同じ悩みを持つ仲間と語り合うことで、孤独感が和らいだり、前向きな気持ちになれたりすることがあります。
- 探し方:がん相談支援センターや病院のソーシャルワーカーに尋ねたり、インターネットで「〇〇がん 患者会」「がん アピアランスケア NPO」などと検索したりすると見つかることがあります。
心のケアとコミュニケーション
外見の変化は、患者さんの心に大きな影響を与えることがあります。ここでは、その影響と対処法、そして周囲の人のサポートのあり方について考えます。
外見の変化が心に与える影響(不安、ストレス、自己肯定感の低下)
脱毛や肌の変化、手術痕などは、以下のような心理的な影響を引き起こすことがあります。
- 不安・恐怖:「これからどうなってしまうのだろう」「人にどう見られるだろう」といった不安や恐怖を感じる。
- 悲しみ・喪失感:「自分らしさが失われた」「健康だった頃の自分はもういない」といった悲しみや喪失感を抱く。
- 怒り・不公平感:「なぜ自分がこんな目に」といった怒りや、他人に対する不公平感を感じる。
- 自己肯定感の低下:自分の容姿に自信が持てなくなり、自己肯定感が低下する。
- 社会的孤立:人と会うのが億劫になったり、社会との関わりを避けたりするようになる。
これらの感情は、誰にでも起こりうる自然な反応です。無理に抑え込もうとせず、自分の気持ちを認めることが大切です。
気持ちを整理し、前向きに過ごすためのヒント
つらい気持ちと向き合い、少しでも前向きに過ごすためには、以下のようなことが役立つかもしれません。
- 正しい情報を得る:アピアランスケアに関する正しい情報を得ることで、漠然とした不安が軽減されることがあります。
- 小さな目標を持つ:「今日は眉を上手に描いてみよう」「新しい帽子を探しに行こう」など、小さな目標を立てて達成することで、達成感や自信につながります。
- 自分なりの工夫を楽しむ:ウィッグや帽子、スカーフ、メイクなど、自分に似合うものや新しいスタイルを見つけることを楽しんでみるのも良いでしょう。
- 気分転換をする:趣味に没頭したり、好きな音楽を聴いたり、軽い運動をしたりするなど、自分がリラックスできることや楽しめることを見つけて気分転換を図りましょう。
- 信頼できる人に話す:家族や友人、医療者、カウンセラーなど、信頼できる人に自分の気持ちを話すことで、心が軽くなることがあります。
家族や周囲の人の理解とサポートの重要性
患者さんにとって、ご家族や親しい友人の理解とサポートは大きな力になります。周囲の人は、以下の点に配慮すると良いでしょう。
- 気持ちに寄り添う:患者さんの話をじっくりと聞き、その気持ちに共感することが大切です。「大丈夫だよ」と安易に励ますのではなく、「つらいね」「心配だね」といった言葉で寄り添いましょう。
- 外見の変化について触れすぎない:患者さんが気にしていることを、あえて話題にする必要はありません。ただし、患者さんから話があった場合は、誠実に耳を傾けましょう。
- 情報収集やケアを手伝う:ウィッグ選びに付き添ったり、スキンケア用品を一緒に探したりするなど、具体的なサポートも喜ばれます。
- これまでと変わらない態度で接する:外見が変わっても、その人自身が変わるわけではありません。これまで通り、自然な態度で接することが、患者さんの安心感につながります。
- 患者さんのペースを尊重する:無理に元気づけようとしたり、活動を強要したりせず、患者さんの気持ちや体調に合わせたサポートを心がけましょう。
専門家(臨床心理士、カウンセラーなど)への相談も選択肢に
外見の変化による精神的なつらさが大きい場合や、家族だけでは支えきれないと感じる場合は、臨床心理士やカウンセラー、精神科医などの専門家に相談することも考えてみましょう。がん診療連携拠点病院には、心のケアを専門とするスタッフ(精神腫瘍医、臨床心理士など)が在籍している場合もあります。専門家は、患者さんが抱えるストレスや不安を和らげ、気持ちを整理するためのサポートをしてくれます。
まとめ
この記事では、がん治療に伴う外見の変化と、それに対するアピアランスケアについて、基本的な知識から具体的なケア方法、さらには心のケアや利用できるサポート体制に至るまで、幅広く解説してきました。
アピアランスケアは、単に見た目を整えること以上の意味を持ちます。それは、治療中であっても「自分らしさ」を失わずに、QOL(生活の質)を維持し、前向きに治療と向き合うための大切な手段です。脱毛、肌の変化、爪のトラブルなど、直面する悩みは人それぞれですが、正しい情報を知り、ご自身に合ったケア方法を見つけることで、その負担を軽減することは可能です。
大切なのは、一人で抱え込まず、担当医や看護師、がん相談支援センター、アピアランスケアの専門家、そしてご家族や信頼できる友人など、周囲のサポートを積極的に活用することです。利用できる公的な助成制度もありますので、ぜひ情報収集をしてみてください。
外見の変化に戸惑い、不安を感じるのは自然なことです。しかし、その変化と上手に向き合い、適切なケアを行うことで、治療中もできる限り快適に、そして自分らしく過ごすことは十分に可能です。この記事が、がん治療と向き合う皆さんの不安を少しでも和らげ、より良い治療生活を送るための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
最後に、もしあなたが今、アピアランスケアについて何か具体的な悩みや疑問をお持ちであれば、まずは以下のようなアクションを検討してみてはいかがでしょうか。
- 担当の医師や看護師に、治療による外見変化の可能性や対処法について尋ねてみる。
- 病院内のがん相談支援センターに連絡し、アピアランスケアに関する情報や地域の専門機関について教えてもらう。
- 医療用ウィッグやケア用品について、専門サロンのウェブサイトを調べてみたり、資料請求をしてみたりする。
- お住まいの自治体で、医療用ウィッグなどの助成制度があるか確認してみる。
あなたらしい毎日を送るために、今日からできる一歩を踏み出してみましょう。
補足Q&Aセクション:アピアランスケアに関するよくあるご質問(Q&A)
ここでは、がん治療とアピアランスケアに関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。記事本文と合わせて、参考にしてください。
Q1. がん治療が始まると、必ず髪は抜けますか?いつ頃から抜けますか?
A1. 全ての治療で必ずしも脱毛するわけではありません。脱毛が起こりやすいのは、主に特定の種類の抗がん剤治療です。使用する薬剤の種類や量、投与スケジュールによって、脱毛の有無や程度、時期は大きく異なります。分子標的薬や免疫療法など、比較的新しい治療法の中には、脱毛の頻度が低いものもあります。また、放射線治療の場合は、照射された範囲の毛が抜けることがあります。
一般的に、脱毛を引き起こしやすい抗がん剤治療の場合、治療開始後2~3週間くらいから自覚症状として現れることが多いと言われています。最初は枕に付く抜け毛が増えたり、ブラッシング時に多く抜けたりすることから気づき、徐々に全体的に薄くなっていくことが多いようです。脱毛のスピードや範囲には個人差があります。
ご自身の治療で脱毛の可能性があるのか、あるとしたらどのようなタイミングで起こりそうか、どの程度抜けそうかについては、治療開始前に担当の医師や看護師、薬剤師から詳しい説明があるはずですので、しっかりと確認しておくことが大切です。不安な点や疑問点は遠慮なく質問し、事前に情報を得ることで、心の準備や対策を進めやすくなります。
Q2. 医療用ウィッグは、治療が始まる前に準備した方が良いですか?
A2. はい、可能であれば治療が始まる前に準備しておくことをお勧めします。その理由はいくつかあります。
まず、精神的な安心感につながります。脱毛が始まる前にウィッグが手元にあれば、「いざという時にはこれがある」という安心感が得られ、脱毛に対する不安を少しでも和らげることができます。脱毛が始まってから慌てて探すのは、体力的にも精神的にも負担が大きくなる可能性があります。
次に、ご自身の髪があるうちの方が、ウィッグを選びやすいというメリットがあります。元の髪型や髪色に合わせてウィッグを選びたい場合、美容師やウィッグアドバイザーに実際の髪を見てもらいながら相談できるため、より自然でイメージに近いものを選びやすくなります。また、試着の際にも、脱毛前の髪のボリューム感を考慮してサイズ感などを確認できます。
さらに、ウィッグの選定や購入、調整にはある程度の時間がかかることがあります。特にセミオーダーやフルオーダーの場合は、数週間から数ヶ月かかることもあります。脱毛が始まってからでは間に合わない可能性も考慮し、早めに情報収集や試着を始めるのが良いでしょう。多くの医療用ウィッグ専門店では無料相談や試着が可能ですので、まずは気軽に足を運んでみることをお勧めします。
Q3. 医療用ウィッグはどのように選べば自然に見えますか?試着はできますか?
A3. 自然に見える医療用ウィッグを選ぶためには、いくつかのポイントがあります。そして、試着は非常に重要です。
自然に見せるためのポイント:
- 髪質と色:ご自身の元の髪質(太さ、クセなど)や髪色に近いものを選ぶのが基本です。ただし、少し明るめの色を選ぶと顔色が明るく見える効果もあります。不自然な光沢が少ないものを選びましょう。人毛100%、人工毛、ミックス毛など、毛材によって質感やお手入れ方法が異なりますので、それぞれの特徴を理解して選ぶことが大切です。
- つむじ・分け目:つむじや分け目の部分に「人工皮膚(スキン)」がついているウィッグは、上から見ても地肌のように見え、非常に自然です。この部分の作りはウィッグの質を見分ける重要なポイントの一つです。
- 毛量とスタイル:不自然に毛量が多すぎたり、自分に似合わないスタイルだったりすると、ウィッグっぽさが出てしまいます。元の髪型に近いスタイルや、ご自身の顔の形や雰囲気に合うスタイルを選びましょう。美容師が在籍するサロンでは、似合うようにカット調整をしてくれるので、より自然な仕上がりになります。
- サイズとフィット感:サイズが合っていないと、浮いてしまったり、逆に締め付け感があったりして不自然に見えたり、不快だったりします。ほとんどのウィッグにはアジャスターが付いておりサイズ調整が可能ですが、試着して頭の形にしっかりフィットするかを確認しましょう。
試着の重要性:
カタログやウェブサイトで見るのと、実際に着けてみるのとでは印象が大きく異なることがあります。必ず試着をして、上記のポイントに加え、着け心地、重さ、通気性なども確認しましょう。できれば複数のウィッグを試着し、比較検討することをおすすめします。FOR ACのような専門サロンでは、美容のプロがお客様一人ひとりに似合うウィッグの提案から試着、調整まで丁寧に対応してくれます。安心して相談できるお店を見つけることが大切です。
Q4. 治療が終わって地毛が生えてきたら、ウィッグからどのように移行すれば良いですか?
A4. 治療が終了し、地毛が生え始めるのは非常に喜ばしいことですが、ウィッグから完全に地毛のスタイルに移行するまでには少し時間がかかり、工夫が必要な時期でもあります。焦らず、ご自身の髪の成長に合わせて段階的に移行していくのが良いでしょう。
移行期のポイント:
- 地毛の成長を待つ:一般的に、抗がん剤治療終了後1~2ヶ月で産毛が生え始め、しっかりとした髪が生えそろうまでには半年から1年程度かかることが多いと言われています。髪質が変わったり、くせ毛になったりすることもあります。まずは焦らず、地毛の成長を見守りましょう。
- ウィッグとの併用:地毛がある程度伸びてきても、まだ全体をカバーするには不十分な場合や、髪質が落ち着かない時期には、ウィッグとの併用が有効です。
- 部分ウィッグ(トップピース)の活用:頭頂部や前髪など、気になる部分だけをカバーする部分ウィッグを使うと、地毛と馴染ませながら自然にボリュームアップできます。
- フルウィッグと地毛の組み合わせ:フルウィッグを少し後ろ目に着けて、自分の前髪やもみあげの地毛を出すだけでも、より自然な印象になります。
- 帽子の活用:ウィッグを着けるほどではないけれど、まだ地毛だけでは心もとないという時期には、おしゃれな帽子やヘアバンドを活用するのも良いでしょう。
- 美容師への相談:地毛がある程度伸びてきたら、アピアランスケアに理解のある美容師に相談し、移行期のヘアスタイルを提案してもらうのがおすすめです。地毛の状態や髪質に合わせて、ウィッグなしでも素敵に見えるカットやスタイリングをアドバイスしてくれます。ベリーショートやショートボブなど、短い髪でもおしゃれなスタイルはたくさんあります。
- ヘアケア:新しく生えてきた髪はデリケートなので、引き続き低刺激性のシャンプーを使用し、頭皮マッサージなどで血行を促進するのも良いでしょう。パーマやカラーリングは、髪と頭皮の状態が十分に回復し、医師や美容師に相談してから行うようにしましょう。一般的には治療終了後1年程度が目安とされますが、個人差があります。
ウィッグからの移行は、ご自身の気持ちと髪の状態に合わせて、無理なく進めていくことが大切です。専門家のアドバイスも積極的に活用しましょう。
Q5. 爪の変色や割れ、欠けに対して、どのようなケアができますか?
A5. 抗がん剤治療などで爪が変色したり、もろくなって割れたり欠けたりすることは、多くの方が経験する副作用の一つです。日常生活で指先はよく使うため、爪のトラブルは不便を感じやすく、見た目も気になるものです。基本的なケアは「保湿」「保護」「清潔」です。
具体的なケア方法:
- 徹底した保湿:爪とその周りの皮膚が乾燥すると、割れやすくなったり、ささくれができやすくなったりします。ネイルオイルやハンドクリームを、爪の根元(甘皮部分)や爪の表面、指先全体にこまめに塗り込みましょう。特に水仕事の後や就寝前は念入りに保湿することが大切です。
- 外部刺激からの保護:
- 手袋の着用:水仕事や掃除、庭仕事など、手先に負担がかかる作業をする際は、必ずゴム手袋を着用しましょう。ゴム手袋の下に綿の手袋をすると、さらに刺激を和らげることができます。
- 爪切り・やすりの使い方:爪がもろくなっているときは、爪切りでパチンと切ると衝撃で割れやすくなることがあります。目の細かい爪やすり(ガラス製やエメリーボードなど)を使って、一方向に優しく削って長さを整えるのがおすすめです。爪切りを使う場合は、入浴後など爪が柔らかくなっている時に、端から少しずつ切り、角を丸く整えると良いでしょう。深爪は避けましょう。
- 甘皮処理は慎重に:甘皮は爪を保護する役割があるので、無理に押し上げたり切ったりしないようにしましょう。
- 爪を清潔に保つ:爪の間や爪周りは汚れがたまりやすいので、優しく洗い、清潔を保ちましょう。ただし、洗いすぎや消毒のしすぎは乾燥を招くので注意が必要です。
- 爪に優しいネイル製品の活用:
- 補強コート:爪が薄くなったり割れやすくなったりしている場合は、爪を保護するベースコートや補強コートを塗るのが効果的です。爪の強度を高め、外部からの衝撃を和らげてくれます。
- ネイルカラー:変色が気になる場合は、爪に優しい成分(有機溶剤フリーなど)のマニキュアを塗ってカバーすることも可能です。ただし、オフする際の除光液もアセトンフリーのものを選び、使用頻度や爪の状態に注意しましょう。
FOR ACのような専門サロンでは、爪の状態に合わせたアドバイスや、爪に優しい成分を用いたネイルケアを提供しています。爪の症状がひどい場合や、痛み、腫れ、化膿などが見られる場合は、自己判断せずに必ず医師や看護師に相談してください。
Q6. 治療中に使える安心なネイル製品はありますか?
A6. はい、治療中のデリケートな爪や肌にも配慮された、比較的安心して使えるネイル製品があります。製品を選ぶ際には、成分表示を確認し、できるだけ爪への負担が少ないものを選ぶことが大切です。
安心して使えるネイル製品を選ぶポイント:
- 刺激の少ない成分:
- 「〇フリー」表示の確認:マニキュアに含まれる代表的な有機溶剤であるトルエン、ホルムアルデヒド、フタル酸ジブチルなどを含まない製品を「3フリー」と呼びます。さらに多くの特定の化学物質を含まないことを示す「5フリー」「7フリー」「10フリー」といった製品もあります。これらの表示は一つの目安になります。
- 水溶性ネイル:有機溶剤の代わりに水分を主成分としたネイルカラーです。特有のツンとした匂いが少なく、爪への負担も軽いとされています。お湯で簡単にオフできるタイプのものもあり、除光液による刺激を避けたい場合に適しています。ただし、水に弱いというデメリットもあります。
- 保湿成分配合:爪の乾燥を防ぐために、保湿成分が配合されたベースコートやトップコート、ネイルオイルなどを併用するのもおすすめです。
- 除光液(リムーバー):マニキュアを落とす際の除光液も、アセトンフリー(非アセトン系)のものを選びましょう。アセトンは脱脂力が強く、爪を乾燥させやすいためです。保湿成分が配合されたものもあります。
- パッチテストの実施:新しい製品を使用する前には、念のため、目立たない部分でパッチテスト(少量を塗って皮膚や爪に異常が出ないか確認する)を行うとより安心です。特に肌が敏感になっている場合は注意しましょう。
FOR ACのようなアピアランスケア専門サロンでは、治療中の方向けに、成分に配慮したネイル製品を取り扱っていたり、爪の状態に合わせたアドバイスを行っていたりします。どのような製品を選べば良いか迷った場合は、そのような専門機関に相談してみるのも良いでしょう。また、使用に関しては、事前に担当医に相談しておくとさらに安心です。
Q7. 肌が乾燥したり敏感になったりするのですが、どのようなスキンケアをすれば良いですか?
A7. がん治療中は、薬剤の影響や体の抵抗力の低下などにより、肌のバリア機能が弱まり、乾燥しやすく、普段よりも刺激に対して敏感になることがよくあります。このような時のスキンケアで最も大切なのは、「優しく洗浄すること」「徹底的に保湿すること」「外部刺激から保護すること」の3点です。
具体的なスキンケア方法:
- 優しい洗浄:
- 洗顔料・ボディソープの選択:洗浄力が強すぎるものは、肌に必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥を助長します。アミノ酸系や弱酸性など、低刺激性で保湿成分が配合されたものを選びましょう。無香料・無着色・アルコールフリーのものがより安心です。
- 洗い方:洗顔料やボディソープは、手や泡立てネットでよく泡立て、肌の上で泡を転がすように優しく洗います。ゴシゴシこするのは絶対に避けましょう。熱いお湯は乾燥を進めるため、38~40℃程度のぬるま湯で洗い流します。すすぎ残しがないように丁寧に流しましょう。
- 徹底的な保湿:
- 保湿剤の選択:化粧水、乳液、クリーム、ボディローション、ボディクリームなど、ご自身の肌質や使用感の好みに合わせて選びます。セラミド、ヒアルロン酸、ワセリン、グリセリンなどの保湿成分がしっかり配合された、低刺激性の製品がおすすめです。
- 保湿のタイミングと方法:洗顔後や入浴後は、肌の水分が急速に蒸発しやすいため、5分以内を目安に、できるだけ早く保湿剤を塗布しましょう。化粧水で水分を補給した後、乳液やクリームで油分を補い、水分の蒸発を防ぎます。特に乾燥が気になる部分には、重ね付けしたり、より保湿力の高いクリームやバームを使用したりすると効果的です。
- 外部刺激からの保護:
- 紫外線対策:治療中の肌は紫外線に対しても非常に敏感です。外出時はもちろん、室内でも日当たりの良い場所では、季節を問わず日焼け止めを塗りましょう。SPF値は日常生活なら15~30、PA値はPA+~PA++程度で、低刺激性(紫外線吸収剤フリーなど)のものがおすすめです。帽子、日傘、長袖の衣類なども活用しましょう。
- 衣類や寝具:肌に直接触れるものは、綿やシルクなどの柔らかく吸湿性の良い天然素材を選びましょう。化学繊維やごわごわした素材は刺激になることがあります。衣類のタグや縫い目が肌に当たらないように注意し、締め付けの少ないゆったりとしたデザインのものが快適です。洗濯洗剤や柔軟剤も、低刺激性のものを選ぶと良いでしょう。
- 加湿:空気が乾燥する季節は、加湿器などを使って室内の湿度を適切に保つことも、肌の乾燥予防につながります。
これらのケアを行っても肌の乾燥やかゆみ、赤みなどが改善しない場合や、発疹などが現れた場合は、自己判断せずに早めに担当医や皮膚科医に相談してください。症状に応じた適切な薬剤を処方してもらえます。
Q8. 家族として、患者の外見の悩みに対してどのようにサポートすれば良いですか?
A8. ご家族ががん治療を受ける中で、外見の変化に戸惑い、悩む姿を見るのは、サポートする側にとっても辛いことだと思います。家族としてできるサポートは、精神的な支えと具体的な手助けの両面があります。
精神的なサポート:
- 気持ちに寄り添い、話をじっくり聞く:まず最も大切なのは、患者さんの気持ちに寄り添い、その悩みや不安を否定せずに受け止めることです。「大丈夫だよ」と安易に励ますのではなく、「つらいね」「心配だね」と共感の言葉を伝え、患者さんが安心して自分の気持ちを話せるような雰囲気を作りましょう。無理に聞き出そうとせず、患者さんが話したいタイミングを尊重することも大切です。
- 外見の変化について過度に触れない、またはオープンに話せる関係作り:患者さんが外見の変化を気にしている場合、周囲がジロジロ見たり、腫れ物に触るように扱ったりすると、余計に傷つけてしまうことがあります。一方で、患者さん自身がその話題を口にした時には、避けずに誠実に対応し、必要であれば一緒に情報を探すなど、オープンに話せる関係性を築くことも重要です。
- これまでと変わらない愛情や態度で接する:外見が変わっても、その人自身の人格や価値が変わるわけではありません。これまでと変わらない愛情を持って接し、一人の人間として尊重する態度が、患者さんの安心感につながります。
- 患者さんの意思を尊重する:アピアランスケアの方法や、社会との関わり方などについて、患者さん自身の意思やペースを尊重しましょう。良かれと思ってアドバイスをしても、それがプレッシャーになることもあります。
具体的な手助け:
- 情報収集の手伝い:医療用ウィッグ、ケア用品、助成金制度、相談窓口など、アピアランスケアに関する情報を一緒に調べたり、資料を取り寄せたりするサポートは非常に助けになります。
- ウィッグやケア用品選びへの付き添い:一人では不安なウィッグの試着や購入、スキンケア用品選びなどに付き添い、客観的な意見を伝えたり、店員とのコミュニケーションを助けたりするのも良いでしょう。
- ケアの実践のサポート:頭皮マッサージを手伝ったり、背中に保湿剤を塗ってあげたりするなど、具体的なケアを手伝うこともできます。
- 家事や育児の分担:治療の副作用で体調が優れない時には、家事や育児を積極的に分担し、患者さんが休息を取れるように配慮することも大切なサポートです。
- 専門家への相談を促す:必要に応じて、医師や看護師、がん相談支援センター、アピアランスケア専門のサロンなど、専門家への相談を一緒に検討したり、予約の手伝いをしたりすることも有効です。
サポートするご家族自身も、無理をしすぎないことが大切です。時にはご自身の休息も必要ですし、不安や悩みを抱えた場合は、医療者や相談窓口に相談することも考えてみてください。
専門用語解説
- アピアランスケア
- がんやがん治療に伴う外見の変化(脱毛、皮膚の変化、爪の変化、手術痕など)に起因する患者さんの苦痛を軽減するためのケアのこと。医学的・整容的・心理社会的支援が含まれる。
- QOL(Quality of Life:生活の質)
- 人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度として捉える概念。医療においては、治療効果だけでなく、患者さんの身体的・精神的・社会的・経済的側面を含めた総合的な「生活の質」を重視する。
- がん相談支援センター
- 全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する無料の相談窓口。患者さんやその家族などが、がんの治療や療養生活、医療費、心のケアなど、さまざまな相談をすることができる。
- 医療用ウィッグ
- 主にがん治療(抗がん剤治療など)や脱毛症などで髪を失った方が使用するために作られたウィッグ。肌に優しい素材の使用、通気性、軽量性、自然な外観などが考慮されている。JIS規格(S9623)も存在する。
- 低刺激性(化粧品など)
- 化粧品などが、皮膚に対する刺激が少ないことを示す言葉。アレルギーテストやパッチテストなどを実施し、安全性を確認している製品が多い。ただし、全ての人に刺激が起きないというわけではないため、使用前には注意が必要。
- 医療費控除
- 1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税の一部が還付される制度。医療用ウィッグの購入費用は、治療の一環として医師の指示に基づき購入した場合など、一定の条件下で医療費控除の対象となる可能性があるが、詳細は税務署や税理士に確認が必要。
- 自治体助成金
- 地方自治体(都道府県や市区町村)が、特定の目的(この場合はがん患者のアピアランスケア支援など)のために、住民に対して支給するお金。医療用ウィッグや乳房補整具の購入費用の一部を助成する制度が多くの自治体で実施されているが、内容は自治体により異なる。
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